誤嚥(ごえん)を減らし、口の中から健康に

お正月時期になると、お餅を喉に詰まらせて病院に運ばれるお年寄りのことが話題になったりします。食べ物をあやまって詰まらせるのは、お年寄りだけではありません。
その傾向と対策を知り、誤嚥による健康災害を減らしましょう。
誤嚥とは
誤嚥とは食べ物や唾液を飲み込むときに、食道ではなく気道に入り込んでしまうことを言います。食事中や睡眠時にふとしたタイミングで誤嚥がおこると、健康な人は自力で排出しようとします。気道内に入った食べ物や唾液を吐き出そうとして、咳やむせるなどの反応がおきるのは、その兆候です。
しかし、お年寄りや嚥下障害を抱える人の場合、吐き出す力が弱まって喉に詰まらせてしまい、救急車を呼ぶようなことにつながる場合も出てきます。
誤嚥性肺炎とは
抵抗力や免疫力が弱っている人の場合、誤嚥による食べ物や唾液などに加え、口や喉にいる細菌が一緒に肺に入ってしまい、肺の中で細菌が繁殖して炎症を起こすことがあります。それによっておこるのが誤嚥性肺炎です。高齢者の肺炎では、誤嚥性肺炎が多く発症しています。
誤嚥をおこしやすい食べ物は
①硬い食べ物、噛みにくいもの
牛蒡・蓮根・リンゴ・タケノコ・コンニャク・タコ・イカ・貝類・キノコ類など
②水分が少ない食べ物、パサパサするもの
ゆで卵・焼き菓子・パン類・芋類など
③粘りがあるもの、くっつきやすい食べ物
餅・だんご・生麩・練りもの・海苔・わかめ・もなかの皮・ウェハースなど
④酸味が強い食べ物
みかんやオレンジ・グレープフルーツなどの柑橘類・酢の物・柑橘類のジュースなど
⑤その他
刺身・ところてん・寒天・ゼリー・缶詰のフルーツ・ひき肉・ナッツ類・お茶・ジュース・水・汁物など
誤嚥を予防しよう
- 誤嚥しやすい食べ物は調理法を工夫したり置き換えたりして、誤嚥のリスクを減らす。
- ちょっとの隙間時間を使って、誤嚥を予防するストレッチなどを行う。
- 声を出して歌を歌う
- 早口言葉を声に出して繰り返す
- 身体のコリをほぐし、両肩や首を曲げたり回したりしてストレッチする
- 鏡を見ながら大きく口を動かして「ア・エ・イ・オ・ウ」を10回繰り返す
- 入浴時に顔や首、口の周りをくるくるとマッサージする
- 食事の前にできる予防法
- 口を閉じて咳をする → 口を開けて咳をする → これを3回繰り返す
- 耳の前を押す → アゴと首の境目部分を指で押す(両こめかみからアゴの真下まで5箇所ほど) → これを3回繰り返す
- ふだんから、大きな口を開けて大笑いする
食事の前後に気をつけること
- 毎日おおかた決まった時間に食事を摂り、1日の生活リズムをととのえる
- 食事の前に手を洗う。うがいをして、口の中と喉も清潔にする
- 食べることに集中するようテレビを消し、パソコンやスマートフォンも扱わない
- できるだけ椅子に座り、姿勢を正して食事する。むせるような時はリクライニング椅子や、ベッドのリクライニング機能を活用する
- 時間をかけてゆっくりと料理を味わい、よく噛んでから飲み込む
- 食後にお茶を飲み、口と喉を衛生的にする
- 歯を磨き、口をゆすぎ、うがいをして口と喉を清潔に保つ
高齢者の場合、誤嚥をしたことに気がつかないまま誤嚥性肺炎を引きおこすことがあります。高齢者や長期入院患者、介護が必要な人などには、周りの人が意識してケアしてあげるようにしてください。
口を清潔に保ち、自分の歯で食べ物を噛むことは、健康の基本です。毎日清潔な環境で、手指や口を清潔に保ち、おいしいものを楽しく食べて元気に過ごしてください。